リスク低減

リスクを評価した結果、社会通念上受け容れられないと判断した場合、そのリスクを受け入れられるレベルまで低減する必要があります。JIS B 9700 (ISO 12100)には、3ステップメソッドの記載があり、3つの方策を順次適用するように書いています。

ステップ1:本質的安全設計方策 

設計を見直すことにより危険源を除去するかリスクを低減する方策で、危険源を無くすことができれば他の保護方策の必要性も無くすことができる唯一の方策です。例えば、機械の隙間を無くして指を挟まないようにする、機械の尖った部分を無くして怪我をしないようにする、低い電圧を用いることにより感電しないようにするなどがありあます。また、十分な視界の確保し機械の危険区域に人が存在しないことを作業者(機械の操作者)が操作位置から確認できるよう機械を設計することや人間工学の原則に従った設計なども本質的安全設計になります。

機械の動く部分が危険源となる場合は、危害を生じないように小さな力で駆動します。尖った部分が危険源になる場合は、尖った部分を無くします。機械に挟まれる場合は、その部分に体の一部が入らないように狭くするか、入っても挟み込まないように広くします。高い温度が危険源になる場合は、温度を下げます。電圧が高くて感電する場合は、感電しないように電圧を下げます。

JIS B 9700には、「制御システムへの本質的安全設計方策の適用」という項目があり、制御システムの安全性能がリスクを十分に低減できるような設計方策をとるように規定しています。起動や停止の原則、再起動の原則などいくつかの設計原則の規定に加えマイコンを使った制御システムに関しても本質的安全設計の項目に規定がありますが、別途記述します。

ステップ2:安全防護及び/又は付加保護方策 

本質的安全設計方策をとることができない場合や危険源の除去又はリスクの十分な低減がができない場合,意図する使用及び合理的に予見可能な誤使用を考慮した、安全防護及び付加保護方策を講じることで,リスクを低減します。 不安定な装置を床に固定するためのアンカーボルトなども保護方策にあたります。付加保護装置の例としては、多くの機械に装備されている非常停止なども相当します。

機械の動く部分が危険源となる場合は、その部分を覆って触れなくする方法があります。作業上動く部分に近づく必要があり覆うことができない場合は、扉やスライドドアを設けて、開いている間は機械が動かないようにする必要があります。ライトカーテンを設けて手が入ると機械を止めたり、近接センサなどで人の接近を感知して機械を停止することもできます。

柵で囲う場合は、人間工学の考慮や機械的強度の確保は当然ですが、機械の動きの視認性確保や柵の隙間から作業者の手指や腕の侵入による危害のリスクも考慮が必要です。詳しくは別途記述します。

センサを用いる場合は、センサの信頼性だけでなく反応時間が問題になることもあります。センサの検知位置から危険域までの距離は計算式が規定されていますので、それに従って十分な距離をとる必要があります。

多くの機械についている赤いボタンの非常停止スイッチによる非常停止機能は、付加保護方策の一つです。規格に適合したスイッチを正しく組み込むことが重要です。その他、重たい機械を運搬するためのアイボルトやフォークリフト用の案内溝、更には、大きな機械を操作するためのプラットフォームや階段なども付加保護方策になります。

ステップ3:使用上の情報 

本質的安全設計方策,安全防護及び付加保護方策を用いて機械側で十分にリスクを低減できない場合、取扱説明書や機械上での注意文や警告文の表示により使用者側でリスクを低減することになります。機械本体や作業場への表示や取扱説明書への記述などで、残留リスクを伝えます。音や光で危険を知らせる方法も含まれます。危険の連絡だけでなく、機械を安全に使うために必要な知識や訓練、手袋やゴーグルなど保護具の必要性も記述します。

機械上の表示は場所等の制限もあり詳しい内容を表示できませんが、作業者がいつでも見ることができるといった利点があります。作業者が見ますのでその人が分かる言語や記号での記載が必要です。取扱説明書は機械の正しい使い方に加え事故につながりかねない間違った使い方なども記載します。機械本体に表示している注意文や警告文の説明などの記載も必要です。

事故が起きてしまった場合など、取扱説明書以外のカタログやパンフレットの記載内容も検証対象になりますので、誤解を招きかねない絵や写真などには注意を払いましょう。

リスク低減対策後の確認

一つあるいは複数のリスク低減策を用いてリスクを低減した後は、それにより十分にリスクが低減されたことを確認する必要があり、場合によっては更なるリスク低減策をとることになります。また、リスク低減策が新たな危険源を生じていないかどうかの確認も必要になりますので、リスク解析の手順に戻って作業を繰り返し、十分にリスクが低減できたことが確認できるまで作業を繰り返します。